お客様からいただいた質問をもとに、今回は出力端子間の容量と交流回路の性質について解説をしていきます、電気電子や回路設計の基礎的な部分でもありますので、理解を深めてぜひお役立てください。
質問:PhotoMOSリレーのカタログに出力端子間容量の記述がありますが、これはなんですか。また、この値の大小によって、どんな影響があるのでしょうか。回答:出力端子間容量とは、PhotoMOSリレーOFF時の出力端子間に存在する静電容量のことをいいます。高周波の負荷を制御する場合には、この端子間容量が小さいことが要求されます。 |
PhotoMOSリレーの出力端子間容量とは、一次側がOFF状態での、出力端子間の静電容量のことをいいます。まずは、静電容量について解説しましょう。
静電容量とは、電気(正しくは電荷といいます)を絶縁された導体に蓄えられる能力のことをいいます。静電容量を持つ代表的な回路素子はコンデンサです。静電容量は記号Cで表し、単位はF(ファラッド)で表します。
例えば、素子に1V(ボルト)の電圧をかけたとき、1C(これは静電容量の記号ではなく電荷の単位のことでクーロンといいます)を蓄えられたら、その素子の静電容量は1Fということになります。しかし、このF(ファラッド)という単位は、雷の電荷を蓄えるレベルの、非常に大きな数値です。したがって、一般に回路素子上で取り扱う静電容量はμF(マイクロファラッドと呼び10のマイナス6乗の大きさです)やpF(ピコファラッドと呼び10のマイナス12乗の大きさです)などの表現を用います。
次に、この静電容量が、交流回路にどういう影響をあたえるかについてを説明します。
電源が交流の回路において、電気の流れにくさをインピーダンスといいます。これは直流回路でいう抵抗にあたります。静電容量のインピーダンスZはZ=1/2πfCで表されます。この式で出て来る記号fは周波数のことで、単位はHz(ヘルツ)。また、Cは静電容量のことを指します。f(周波数)、C(静電容量)が大きいほどインピーダンスは小さくなるため、電流は流れやすくなります(図1)。
一般的に、PhotoMOSリレーの一次側がOFF状態のときには、二次側(出力側)の漏れ電流は小さいものが望ましいです。特に高周波の場合、この静電容量(=PhotoMOSリレーでの出力端子間容量のことです)を小さくすれば、漏れ電流を抑えることにつながります。
出力端子間容量の小さいPhotoMOSリレーは、漏れ電流を小さくする必要のあるスキャナーや高周波テスタ、オーディオ機器の制御では特に重要です。
例えば、PhotoMOSリレーRFタイプのAQY221N3Vは出力端子間容量1pFと非常に小さくなっています。出力端子間容量の小さいPhotoMOSリレーをお探しの方は、ご参考にしてください。
いかがでしたでしょうか?今回は出力端子間容量と静電容量について解説しました。静電容量Cの単位はF(ファラッド)で、回路上でよく使用される単位はμFやpFです。単位を間違わないように注意してください。
今回のキーワード
- コンデンサ:コンデンサとは電荷を蓄えて放電をする素子です。容量の大きいものでは、バッテリーの役割を果たして、機器のメモリ保持をするものもあります。
- インピーダンス:インピーダンスとは交流回路での電圧と電流の比のこといいます。
- 漏れ電流:漏れ電流とはPhotoMOSリレーの出力がOFFなのに、出力側に流れてしまう電流のことです。