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リレー関連情報

投稿日:2021年12月15日 / 更新日:2023年09月07日

リレーコイルのサージ保護について

素子の破損を招いてしまうやっかいな「サージ」から回路を保護する方法について解説します。

今回は、リレーコイルの「サージ保護」について、お客様からいただいた質問をもとに解説します。定常時の値を上回る非常に高い電圧が発生する「サージ」。素子の破損を招いてしまうやっかいな電気です。このサージから回路を保護するには、どうすればよいのでしょうか。その方法についてご紹介します。

質問:リレーコイルなどの誘導負荷を遮断する際に発生するサージから、接点や回路を保護するにはどうすればいいでしょうか?

答え:リレーコイルは誘導負荷ですので、回路を遮断する際に大きなサージ電圧が発生し、接点や電子回路を破損させてしまうことがあります。このサージの対策のためには、直流の場合はダイオードを、交流の場合はCR回路を負荷に並列に挿入することが有効です。

はじめに、サージ電圧についてご説明します。リレーコイルなどの誘導負荷の回路を遮断する際、数百から数千Vの値で、電源電圧とは逆の方向に高い電圧が発生する現象が起きます。この電圧のことを「逆起電圧」といいます。高い電圧によって大電流が流れることが、誘導負荷を制御する接点や回路に大きなダメージを与え、その寿命を著しく短くしてしまう恐れがあるのです。
この逆起電圧から接点や回路を保護するためには、保護回路が必要です。用いるべき保護回路はDC誘導負荷とAC誘導負荷で異なりますので、それぞれの負荷ごとの、対策について説明します。

1. DC誘導負荷の場合

DC誘導負荷の保護回路は、図1で示しているようにダイオードを設置する方式が有効です。

20140710-1

この保護回路は直流の場合にのみ適用できるもので、ダイオードを設置することでサージを負荷で消費させて保護します。設置するダイオードは、逆耐電圧として回路電圧がそれほど高くなく安定している電子回路の場合は、電源電圧の2~3倍程度、一般的な回路の場合は回路電圧の10倍以上のものとし、順方向電流は負荷電流以上のものを選定してください。 

ここで、DC誘導負荷におけるダイオードのあり・なしによる逆起電圧について、図で比較してみます。図2はダイオードがない場合、図3はありの場合の電圧波形の一例です。
ダイオードがない図2の場合は、遮断(OFF)する際に260V の逆起電圧が発生し、一方ダイオードがある図3の場合は、このサージを負荷で消費させているため逆起電圧が発生していないことがわかります。

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2. AC誘導負荷の場合

AC誘導負荷の回路を遮断する際に、負荷両端に逆起電圧が発生します。この場合の回路保護は図4で示すC-R回路が有効です。
C-R回路は、接点OFF時のサージをコンデンサによって抑制することで保護します。コンデンサcは接点開離時の放電制御効果を受け持ち、抵抗rは次回投入時にコンデンサcによる突入電流制限のために挿入するものです。

20140710-4

コンデンサcと抵抗rの目安としては

  • コンデンサc:接点電流1Aに対し0.5~1(μF)
  • 抵抗r:接点電圧1Vに対し0.5~1(Ω)

ですが、負荷の性質や特性のばらつきにより必ずしも一致しません。

また、コンデンサcの耐圧は一般に200~300Vのもので、かつAC用のコンデンサを使用してください。
AC誘導負荷において、C-R回路がある場合とない場合の遮断時の電圧波形の例を示したものが、図5と図6です。C-R回路がある図5の場合は、接点がOFFになった際、電源電圧を超えることなくOFF状態となっているのに対して、C-R保護がない図6の場合、接点OFF後18msの間に、630Vという電源電圧AC200Vの約3倍のサージ電圧が発生していることがわかります。

20140710-5 20140710-6

C-R方式は直流回路にも使用できますが、その際は直流用のコンデンサを使用してください。

いかがでしたでしょうか?今回はサージ保護機能について解説しました。保護回路がある場合とない場合での、サージ電圧の発生有無についておわかりいただけたのではないでしょうか。サージは接点OFF時に起こる現象です。接点や回路を保護するためにも、今回ご紹介したようにAC、DC誘導負荷それぞれにおけるサージ対策を行ってください。
ただ、サージ対策の回路を用いる際にも、ダイオードやコンデンサを設置するだけではなく注意が必要です。例えば、接点間にコンデンサを入れるとコンデンサの蓄積していた電荷が接点ON時にショート電流を発生させてしまうなどの破損要因になります。特性にあった対策を行うようにしてください。

今回のキーワード

  • サージ:サージとは誘導負荷をOFFにした際に瞬間的に発生する高電圧のことをいいます。
  • 逆耐電圧:逆耐電圧とはダイオードの整流から逆方向に流れたとしても破損しない電圧のことをいいます。
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